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from 草枕 (2)

a0021192_151139.jpg 世に住むこと二十年にして、住むに甲斐ある世と知った。二十五年にして明暗は表裏のごとく、日のあたるところにはきっと影がさすと悟った。三十の今日はこう思うている。--喜びの深きとき憂いいよいよ深く、楽しみのおおいなるほど苦しみも大きい。これを切り放そうとすると身がもてぬ。かたずけようとすれば世が立たぬ。金は大事だ、大事なものがふえれば寝るまも心配だろう。恋はうれしい、うれしい恋が積もれば、恋をせぬ昔がかえって恋しかろ。閣僚の肩は数百万人の足をささえている。背中には重い天下がおぶさっている。うまい物も食わねば惜しい。少し食えば飽き足らぬ。ぞんぶん食えばあとが不愉快だ。
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by ryonutsjp | 2004-05-24 15:12 | 引用

from 草枕

a0021192_12265.jpg 善は行いがたい、徳はほどこしにくい、節操は守り安からぬ、義のために命を捨てるのは惜しい。
 これらをあえてするのは何人にとっても苦痛である。
その苦痛をおかすためには、苦痛に打ち勝つだけの愉快がどこかに潜んでおらねばならん。画というも、詩というも、あるは芝居というも、この悲酸のうちに
籠る快感の別号にすぎん。
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by ryonutsjp | 2004-05-20 12:27 | 引用